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- 屋上緑化「設計ガイド」注意ポイント早分かり
都市のヒートアイランド対策の一環として、注目を集める屋上緑化。しかし安易に導入を行うと、植物が枯損するだけでなく、漏水など建物側のトラブルにも繋がります。このページでは、設計活動の際に注意が必要なトラブル回避のポイントについてご紹介します。
自然の土壌は1m3当り1600kg程度の重さになりますので、屋上に10cm敷き込むだけで1m2当り160kgの荷重が掛かることになります。現在では、土壌の軽量化技術も進歩し、自然土壌の約半分と軽量の人工土壌(ビバソイル)の開発や、既存施設でも対応可能な、1m2当り60kgの超軽量緑化システムも開発されていますので、建物用途・空間デザインによって最適なシステムを選択してください。
(荷重別・植物に合わせて屋上緑化工法を選択)
種別 | 庭園型緑化 | 薄層緑化(60kg/m2以下) | ||||
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植物種類 | 高木※1 | 低木 | 芝生・地被 | 地被 | 芝生 | |
m2荷重 | 400kg〜 | 300kg〜 | 150 kg〜 | 60kg以下 | ||
(荷重は植栽基盤に平均的な植物の重量を加えています) | ||||||
厚 (mm) |
土壌 | 400 | 300 | 150 | 100 | 60 |
排水層 | 45 | 45 | 25 | |||
工法名※2 | ビバソイルシステム | スマート システム |
エコグリーン マットシステム |
※1 樹高(H)が3m程度の高木を想定しています。それ以上の樹木を植栽する際はご相談ください
※2 各工法の名称をクリックすると、詳細が掲載されたページへとリンクします
近年都市では、短時間に集中豪雨のような雨が降ることが珍しくありません。社団法人公共建築協会では、屋上緑化における排水基準を1時間当り240mm以上と規定しています。排水がうまくいかないと、雨水が溢れて居室側に浸入したり、極端な例では屋上の立ち上がり部分を超えて土壌や雨水が流れ出してしまうこともあります。屋上緑化で起こるトラブルの大多数は、「水」が関係しているといっても過言ではありません。
途中階のルーフバルコニーで屋上緑化の設計を行う際、雨どいを通じて屋上や屋根からの雨水が植栽帯に流れ込まないように注意してください。
屋上では水が下に染み込むことができません。そのためパネル状の排水層などを敷きこんで、排水を促してください。また排水口が外側にある場合、排水量に合わせて水抜き穴配置についての図示をしておくと、現場でのトラブルが少なくなります(植栽帯の長さや勾配によって異なりますが、一般的には@2mピッチでφ100のVP管の半割りを入れています)。
※ 60kg/m2の薄層緑化システムには、排水機能が組み込まれています。
排水口(ルーフドレン)に、落ち葉や土が詰まったり掃除ができない状態になると、滞水して水漏れなどの原因になります。植栽帯とは縁をきるか、点検口をつけるなど常にチェックできるようにしてください。
一般的に利用されている防水の場合、押さえコンクリートをするか、耐根層(ルートガードD)を設ける必要があります。また表面を流れる水が裏側へ周り込まないように、土壌の天端は防水の立上り押さえから150mm以上の空間を確保するようにしてください。
屋上では、階層が高くなるほど風が強くなります。また周辺の状況によりビル風が発生するため、十分な風対策が重要となります。
風の影響をもっとも受け易いのが中高木です。風で傾いたり倒れたりしないよう地下支柱を設置してください。樹高が高い場合、躯体と結束(アンカーによる固定)したりと現場ごとの対策が必要になります。
風の影響によって土壌の表面が乾くことを防ぐため、土壌表面にはマルチング材を敷き詰めてください。表面化粧としても効果があります。
屋上緑化を導入すると、その後の水やりが心配だというお声を聞きます。確かに屋上は日当たりが良い反面、風が強く乾きやすいので、特に緑化してから数年間の水やりはとても重要です。
水やりのポイントは「一度にたっぷりと水をあげる」ことです。土の表面が濡れていても、意外と水は土中に入っていません。その場合、強い陽射しと風ですぐに乾いてしまいます。表面にばかり水を与え続けると、根が表面に集まり、かえって乾燥に弱くなります。
風の強い屋上では、周囲に飛散しやすいスプリンクラーの使用は生育にムラが発生する心配があります。確実に土壌に染み込ませるものとして、現在では点滴式の灌水ホースを利用するケースが増えています。電気式のタイマーを取り付ければ、灌水回数や灌水時間を簡単に設定でき、省管理を実現することが可能です。自動灌水設備の詳細は「こちら」から。
屋上緑化の成功には複合技術が必要ですが、この10年の技術革新によって、トラブル回避のポイントも明確になってきています。これまでの経験が、お施主様の環境メリット・経済メリットに繋がりましたら幸いです。必要な図面がありましたら、以下のページを参照ください。