都市に生み出された緑豊かな空間を守り、維持する。「なんばパークス」の維持管理の手法や商業施設特有の注意すべきポイントについてなんばパークス パークスガーデン事務局 統括リーダーの西塙 征広さんにお話を伺いました。
- 小林
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宜しくお願いします。現在16人の方々が、この屋上庭園の維持管理をされているとお聞きしています。実際にはどのようなお仕事をされているのでしょうか?
- 西塙さん
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グリーンスタッフと呼ばれるメンバーが5名体制で、植物の全般的な管理を行っています。それにお客様への緑の接客ですね。
水やりの状況 巡回の模様 - 小林
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「緑の接客」とはどのような内容なのですか?
- 西塙さん
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はい。管理というのは裏方的な作業として、お客様には見えない方が望ましいということが普通だと思います。しかしここでは敢えて、管理や花の植え替えなども営業時間内に行っています。「魅せる管理」を行うことで、お客様から質問や意見などをお聞きすることも出来ますし、そこからコミュニケーションが生まれています。これらは、グリーンスタッフの1つの「おもてなし」だと思っています。商業施設だからこそのあり方ですね。そのための「魅せる管理通路」なども設定されているんですよ。
植物の種類や育て方について
質問されることが多いそうです - 小林
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「なんばパークス」の大きな特徴として、都会の中心地に貸し菜園「アーバンファーム」を設けていることがあげられると思います。どのような方が利用されているのですか?
- 西塙さん
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オーナーさんと
二人三脚で菜園を営んでいます「アーバンファーム」は、一般の市民の方を対象にした貸し菜園です。現在、公募によって選出された27区画のオーナーさんが、野菜やハーブ、果物の栽培を始めたところです。事務局では、オーナーさんが来られない時に、水やりや虫取りなど簡単なサポートをしています。都会の中での農作業となりますので、農具を持ち込むのはなかなか大変だと思います。一部有料ですが、バケツやスコップなどの基本的な道具や薬剤は事務局で用意しています。
- 小林
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実際に利用されているオーナーさんの声はいかがですか?
- 西塙さん
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とても気に入って頂いています。近隣に住まわれているオーナーさんは、近所の方に「奥さん、いつもどこに行ってるの?」と聞かれて、「畑」と答えているそうです。普通の何気ない一言ですが、都市の中では、とても不可思議な言葉に聞こえます。オーナーさんの中には、近所で洋食屋さんを営んでいる方もいらっしゃいます。調理でパセリがなくなると、ここに取りに来られます。僅かな収穫量ですが、その量で良いのだそうです。また先日は、あるオーナーさんが同僚のお友達を連れてこられて、「ええやろ〜」と説明されていました。やはり植物を育て、収穫を味わうというのは、大変喜ばれることだと実感しています。
- 小林
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西塙さんは、「なんばパークス」の緑化部分の施工面全般に携わられてきましたね。施工面で特に注意されたことはどのようなことですか?
- 西塙さん
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通常の緑化手法では、植栽から5年〜10年先で1つの完成を見るところですが、「なんばパークス」では、商業施設となるためオープン時にある程度の豊かな杜(もり)を確保したいという要望がありました。そのため、通常より密度を高めて植栽しているところもあります。
- 小林
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「なんばパークス」では、人工土壌「ビバソイル」をはじめとして、排水層や嵩上げ材、自動灌水設備といった私どものトータルな緑化技術を活用して頂きました。実際の使い勝手はいかがでしたでしょうか?
- 西塙さん
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人工土壌「ビバソイル」の撒き出し状況2年間に渡って、この屋上庭園を施工してきた者から言わせて頂くと、特に「ビバソイル」は、骨材としては本当に良い「素材」だと思います。ただ、屋上緑化対応ということで、有機分が少なく設定されている分、特に養分を必要とする花の場合は、通常の「ビバソイル」だけではダメだと感じるところがあります。植物に合わせて、有機の混入割合も変更するといった使い分けも必要ではないでしょうか?
- 小林
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確かにその通りだと思います。率直なご意見本当にありがとうございます。素材の良さを、現場に合わせてどうカスタマイズするか、この点について積極的に対応していきたいと思います。最後になりますが、この場所を生かして、これから行いたいことを教えていただけますか?
- 西塙さん
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無機的な建築物と、植物・自然といった有機的なものが一体となっている形がこれからの都市のあるべき姿だと思います。このことをより多くの人に伝えるための普及活動も積極的に行っていきたいと思っています。この屋上庭園を舞台に、樹木や草花について、また屋上緑化技術の知識を深められる実践型の講座(ガーデニング教室)も始まりました。緑についてのイベントの開催や、環境教育として、課外授業の受け入れも経験しました。すべて手探りの状態ですが、自然の豊かさを感じられる空間であり続けられるよう、努力していきたいと思っています。
- 小林
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貴重なおはなしをどうもありがとうございました。
(取材日2003年11月15日)